弁護士法人萩原総合法律事務所(茨城県筑西市・常総市・ひたちなか市) | 弁護士コラム:【遺言について⑥】遺言の方式・手続 その2-自筆証書以外の遺言
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【遺言について⑥】遺言の方式・手続 その2-自筆証書以外の遺言

【遺言について⑥】遺言の方式・手続 その2-自筆証書以外の遺言

はじめに

前回は,遺言者の意思を反映するという観点から,問題になる遺言の不備とその対策をご紹介しました。最終回の今回は,これまで主に扱ってきた自筆証書遺言とは別の形式の遺言をテーマとします。

 

秘密証書遺言(民法970条)

⑴ 概要

署名・押印した遺言書を封筒に入れて封をし,遺言書の押印に使ったハンコで封じ目に印を押すことで作成できる遺言です。有効な遺言書にするには,公証役場に封筒ごと持って行き,自分の遺言書であること及び住所氏名を述べて,公証人と証人2人以上と一緒に署名押印する必要があります。

遺言書の文面は自分の好きに書けるけれども,自分一人では有効に成立させられないものなので,自筆証書遺言と後述する公正証書遺言の中間にあたるものといえます。しかしながら,後述のように,両者の長所を兼ね備えているようなものではなく,中途半端なものです。実際の活用件数は少なく,法務省の行ったアンケート調査で存在を無視されていることがあったくらいにマイナーな形式です。

 

⑵ メリット

まず,自分一人で内容を作れることがメリットです。作成後に封をしてしまうので,内容の秘密は自筆証書遺言以上に確保されます。それでいて,本人が書いたということは認証されているので,偽造を疑われることはありません。

また,最後の公証役場での署名以外は手書きの必要がありません。自筆証書遺言とは異なり,本文も手書きせずに済みます。もっとも,本文を手書きして自筆証書遺言としての方式に従って作成されていると,秘密証書遺言としては不備があっても自筆証書遺言としては有効になります(民法971条)。結局は本文を自筆したほうが無難ですから,大きなメリットとは言えません。

費用面では,公正証書遺言に比べると,公証人は方式に関する記載しかしないので,低額(1万1000円の固定額)で済むことはメリットです

 

⑶ デメリット

まず,内容の秘密が守れることの裏返しで,誰にも見せない・相談しないで作ると内容の間違いを他者に指摘してもらうことができません。

また,存在自体は公証役場の記録で確認できますが,遺言書の保管はしてもらえないので,紛失で無意味になってしまう可能性があります。

さらに,内容は一人で作れても,公証人と証人2人の署名押印が必須なので,一人だけでは完成できないし,公証役場に行く手間もかかります。

加えて,裁判所での検認手続(第1回参照)によらずに開封することができません。自筆証書遺言の場合は新設された保管制度を使うことで検認を不要にできますが,秘密証書遺言では保管制度が使えません。

 

公正証書遺言(民法969条)

⑴ 概要

公証役場で公正証書を作る形式での遺言です。

証人2人以上の立会いのもと,遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授して公証人が筆記し,正確な筆記であると遺言者・証人が確認してから署名・押印し,最後に公証人が方式に従って作ったものである旨の認証と署名押印をして完成します。

 

⑵ メリット

自分で書く必要があるのは,公証人が書き間違えていないことを確認した後での署名だけです。本文の作成は公証人がやってくれるので,文言の誤りや形式違反での無効は,まずありえません。

また,検認手続が不要になります(民法1004条2項)。裁判所を通じて手続する必要がなく,遺言の実現のための手間や時間が省けます。

さらに,公正証書遺言は,紛失で無駄になる心配がありません。作成記録が残されてオンライン検索で存否が確認可能なうえ,作成した公証役場に原本が最低20年間は保管されています(公証人法施行規則27条1項)。

 

⑶ デメリット

まず,内容を証人の前で公証人に伝えることが前提になっており,内容を秘密にすることはできません。公証人は職務上の守秘義務を負っているし,口の固い証人を用意すれば問題にはならないでしょうが,他の手段ほどの密行性はありません。

また,公証役場で手続をするため,費用は相応に必要です。相続・遺贈の目的物の価値に応じた証書作成の手数料(最低でも1万6000円)がかかります。公証役場に行く手間もかかります(費用を追加して公証人に出張してもらうことはできますが)。

さらに,自筆証書遺言ほど気軽に作れない以上,十分な内容を考えておく必要があります。公証人は遺言者が伝えた内容を文字に起こしてくれるだけなので,事前の調査や検討をしておかないと,もったいないことになってしまう可能性があります

 

特別方式の遺言(民法976条~979条)

これまで述べてきた自筆証書遺言,秘密証書遺言,公正証書遺言が普通の方式の遺言です。これらのほかに,民法は,病気や遭難で死の危機が迫った者や伝染病・船旅で一般社会から隔離された者のために簡略化した方式を設けています。例えば,船舶遭難で瀕死の場合は,証人2人以上が立ち会えば口頭で遺言ができます。

特別の方式によって遺言をするメリットは特にありません。他方,普通の方式で遺言できるようになってから6か月生存していれば特別方式の遺言は無効になってしまうため,効力は不安定です。(民法983条)。また,仮にそのまま死んでしまって有効な場合でも検認手続は必要なので,実現に手間と時間はかかります。

そもそも狙って使えるようなものではありませんし,現代社会ではあまり活用されることがない方式です。船旅が一般社会と隔絶していると捉えていたり,船が遭難することを想定していたりするあたりに時代が感じられます。

 

まとめ

自筆証書遺言以外の方法で遺言をするのであれば,公正証書遺言がほぼ唯一の選択肢です。

もっとも,有意義な公正証書遺言の作成には,事前の調査・検討が必要です。弁護士に相談・依頼したうえで作成されることをお勧めします。

監修者情報
弁護士風見 美瑠

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