

SNS(インターネット上で、使用者同士が交流できるサービス)が普及し、誰でも簡単に写真や動画など自分の作品を投稿できるようになりました。
このような作品について、自分の権利を守るため、他人の権利を侵さないようにするためには、何にどのような権利が生じるのかの意識が必要です。
例えば、動画配信者が他の配信者と同じ企画を扱うことに問題はないのでしょうか。
創作については、まず、著作権が関わってきます。
著作権とは、「著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利」(著作権法1条)です。
作者の権利として広く「著作権」という場合、精神的な面で作者の利益を保障する「著作者人格権」と、財産的な面で作者の利益を保障する「著作財産権」の2種類が含まれます。後者だけを指して単に「著作権」と言う場合もあります(狭い意味での著作権)。
著作者人格権には、公表するかどうかを決める権利(公表権。同18条)、作者名を出すか・出す場合に名義を何にするかを決める権利(氏名表示権。同19条)、勝手に作品を改変されない権利(同一性保持権。同20条)があります。
狭い意味での著作権には、その作品を複製する権利(複製権。同21条)、作品を公開したり譲渡したりする権利(上演権、公衆送信権、展示権、頒布権など。同21条から26条の3)、作品を翻訳し、映像化など変形させる権利(翻訳権、翻案権等。同27条)といったものがあります。
著作権は、作者に負担をかけないようにするため、作品が作られただけで成立します(「無方式主義」。同17条2項)。
権利を得るために申請・登録が必要な特許権や商標権とは異なります。
そして、通常、著作権は作者の死後70年間存続します(同51条2項)。もっとも、2018年施行の法律改正より前は50年間であり、一度消滅した著作権は改正後も復活しないため、1967年末までに著作者が死亡していれば原則的に消滅しています。
例えば、1970年に亡くなった三島由紀夫の著作権は、70年後の2040年末まで続きます。しかし、1965年に亡くなった江戸川乱歩の著作権は、改正法施行時に50年が過ぎていたため、没後70年を待たずに消滅しています。
では、著作権で保護される作品-著作物-とはどのようなものでしょうか。
⑴ 著作権法の規定
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
⑵ 条文の説明
ア「思想又は感情」
判例に示された解釈で、「人間の精神活動全般を指すもの」とされています(東京高裁昭和62年2月19日判決)。そのため、統計データなど、単なる事実や情報は除外されます。
また、『人間』ではない者の作品についても、今の法解釈では保護はされないと考えられています。アメリカでは、写真家が猿にカメラを使わせて撮った写真について著作権が問題になる紛争が起きています(画像を確認されたい方は、「サルの自撮り」または「monkey selfies」で検索してみてください)。このケースでは、合衆国著作権局が「人間以外の動物による作品はアメリカにおける著作権の対象とはならない」と声明を出し、後の裁判でも同様の考え方がとられています。
なお、写真家側を擁護する意見として、創意工夫をしたのは写真家でサルはただシャッターを押しただけだったなら写真家の作品である・サルが無駄に何枚も撮った大量の写真の中から写真家の個性が反映して選び抜かれたなら、写真家の作品だといったものもあります。
イ 「創作的」
先ほどの判例で、厳格な意味での独創性があることや他に例がないことまでは要求しない、とされています。作者の個性が何らかの形で現れていれば足ります。
逆に、ただ単純に真似しただけのものや、誰が作っても同じになってしまうほどにシンプルなものは除かれます。
例えば、映画の中で使われた社交ダンスのステップについて、振付師の著作権を否定する判断を示した裁判例があります(東京地裁平成24年2月28日判決-Shall we ダンス? 事件)。“既存のステップを適宜自由に組み合わせて踊られることが前提とされている社交ダンスでは、その組合せに何らかの特徴があるだけで著作物性を認めてしまうと,わずかな差しかない無数の振り付けについて著作権が成立し,特定の者の独占が許されてしまう”と判断されました。このようなシンプルなものの組み合わせの場合は、単に組み合わせただけではないといえるだけの独創性が求められています。
ウ「表現したもの」であること
具体的な“表現”であることが必要です。表現の前段階であるアイデアは保護されません。
また、キャラクターの特徴のような、具体的表現から発展した抽象的概念も保護しないとした判例があります(最高裁平成9年7月17日判決-ポパイネクタイ事件ポパイの特徴をイメージしたキャラクターを使ってネクタイを作って売った業者が訴えられた事件。)。例えば、くまのプーさんが描かれたイラストは著作物ですが、はちみつ好きで赤いシャツを着た二本足の黄色いクマというキャラクター性までは著作物として保護されません。キャラクターは保護されないとだけ理解すると間違いで危険。元の漫画のコマやイラストは保護されています。
そのため、キャラクターの原典がそのまま分かるような、イラストのパクリでは違法となります。
サザエさんの原作イラストを勝手にまねして書いたバス会社に損害賠償を命じた裁判例があります(東京地判昭和51年05月26日―サザエさんバス事件)。
エ「文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するもの」
アで触れた判例で、“知的、精神的文化活動全般を指す”とされていて、かなり広範に認められます。他方、化学物質のような工業的な生成物等は除かれることになります。
⑴ 著作権法の規定
(著作物の例示)
第十条 この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。
一 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物
二 音楽の著作物
三 舞踊又は無言劇の著作物
四 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
五 建築の著作物
六 地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物
七 映画の著作物
八 写真の著作物
九 プログラムの著作物
⑵ 具体例
ア 言語の著作物 ⇒小説、脚本、論文、詩、俳句など
イ 音楽の著作物 ⇒楽曲、楽曲に合わせた歌詞
ウ 舞踊、無言劇の著作物⇒日本舞踊、バレエ、ダンスやパントマイムの振り付け
エ 美術の著作物 ⇒絵画、版画、彫刻、漫画、書など
オ 建築の著作物 ⇒芸術的な建造物(設計図は図形の著作物)
カ 地図、図形の著作物 ⇒地図、学術図面、図表、模型(原子模型、天体の動きを説明する同心円上の図など、理論を説明するためのモデル。鉄道模型・プラモデル等は美術の著作物の範囲。)
キ 映画の著作物 ⇒劇場用映画、テレビ番組、ネット配信動画、ビデオソフト、ゲームソフトなど
ク 写真の著作物 ⇒風景写真、グラビア写真など
ケ プログラムの著作物 ⇒コンピュータ・プログラム
動画の題材・企画の段階であれば、表現ではなくアイデアです。そのため、著作権の保護対象外です。同じ企画をしただけであれば、その動画の目新しさや集客性の点はともかく、著作権の問題はありません。
もっとも、他の人が作成した動画そのものは、映画の著作物として著作権の対象となります。そのため、許諾なく切り抜き動画や再編集をしたりするのは当然に問題です。また、番組構成や構図、配色などまで真似してしまい、元の動画の内容・形式や表現の本質的特徴が維持されているような場合は、複製または翻案(改変、問題あるパロディ)にあたるものとして著作権侵害の可能性があります。
著作物に関する権利の侵害については、民事上の責任追及・刑事処罰の可能性があります。
民事の問題として、権利者は侵害をした者に対し、侵害行為を止めることの請求や、損害賠償や不当に得た利益の返還の請求、名誉回復などの措置(例えば謝罪広告)の請求ができます。こうした請求に当事者間で争いがある場合、最終的には裁判で決着を図ることになります。
また、著作権侵害は犯罪であり、狭い意味の著作権等の侵害は10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金、著作者人格権等の侵害は5年以下の懲役又は500万円以下の罰金と定められています(著作権法119条以下)。もっとも、一部の権利侵害(コピーガード解除装置の公衆提供など)を除き、被害者である著作権者が犯罪を捜査機関に申告して処罰を求めることが処罰の条件となっています(著作権法123条)。
さらに、SNSの利用にあたって著作権を侵害してしまった場合、そのSNSの規約に沿った措置を受けることにもなります。例えばYouTubeでは、著作権を侵害している場合、運営側に動画を削除されたり、収益化に制約がかかったり、チャンネルを停止されたりする可能性があります。
自分の著作権が侵害された場合は、
①まず、スクリーンショットなどで証拠の確保。
②SNSなどで著作権侵害をされている場合、運営に通報・問い合わせや削除申請をして被害拡大を防ぐ。
③(必要なら専門家に相談したうえで)相手を特定し、侵害状態への対処要求や損害賠償の請求。悪質な場合は並行して刑事告訴。
といった流れでの対応が考えられます。

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