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【遺言について③】 遺言の内容面その1-総論

【遺言について③】 遺言の内容面その1-総論

はじめに

前回は,守らないと無効になってしまう自筆証書遺言の形式面に関してお伝えしました。端的にまとめると,原則として全文を自分で手書きし,日付を書いて署名押印をすることが必要です。

第3回の今回は,遺言の内容面について,概観をお伝えします。

 

遺言自由の原則

条文の文言上で明らかにされているわけではありませんが,民法では,「遺言自由の原則」という考え方がとられています。これは,私有財産制度によって存命中は自由に自分の財産を処分できたことを,死後にも及ぼそうとするものです。

この遺言自由の原則から,遺言の内容・遺言をする時期を自由に決められることになっています(前回までに述べたように,形式には自由が認められていません)。民法の条文の上では,形式さえ守れば一度した遺言の内容が変更できること(民法968条3項),撤回できること(同1022条)という形で表れています。

もっとも,内容面の自由については,以下述べていくように,一定の制限が法律上かかっています。

 

法定遺言事項

1 はじめに

まず,どんな内容であっても書くこと自体は自由ですが,その内容が法的拘束力を持つかは別問題です。次に掲げるような根拠規定のあるものを除いては,法的に拘束力を持たせることができません。

例えば,自分のお葬式についての指示は,法定された事項に含まれていないので,拘束力を持ちません。「私の遺灰をオーストラリアで撒いてきてください」と書いたとしても,遺された人への単なるお願いにとどまり,相続人が従う義務はありません。どうしても法律的に自分のお葬式について処理を託したいのであれば,死後事務委任契約を結ぶことが考えられます。

 

2 法定遺言事項の内容

⑴ 認知(民法781条)

婚姻関係にない男女から生まれた子との間で法律上の親子関係を生じさせるための行為です。遺言によらなくても可能ですが,何らかの事情で生前にはできない場合に備え,遺言で行えるようになっています。

なお,認知が問題になるのは通常は父親だけです。母子関係は,おなかを痛めて産んだことで基本的に法律上も確定できるからです。

 

⑵ 未成年後見人の指定(民法839条),未成年後見監督人の指定(同848条)

死別や離婚でひとり親となっている場合,子が未成年のうちにその親が亡くなってしまうと,親権を行う者がいなくなってしまいます(離婚した相手親には当然には親権は移動しません)。このような場合,子の監護と財産の管理を正しく行うために,未成年後見が開始されます(民法838条)。

これに備え,最後に親権を行う者は,誰が未成年後見を担当するかを遺言で指定しておくことができます。また,未成年後見人の事務処理を監督するために,未成年後見監督人を指定することもできます。

 

⑶ 相続分の指定(民法902条),遺産分割方法の指定・5年までの間の遺産分割の禁止(同908条),相続人の担保責任の指定(同914条)

生前の財産処分が自由であることに沿って遺産の分け方についても,遺言で自由に定められます。それぞれの相続人の相続分(相続する割合)を定めたり,何をどう分配するか指定したり,死後5年以内であれば逆に分けないように指定したりすることができます。また,遺産分割にあたって相続人が他の相続人との公平のために責任(担保責任)を負うような場合,それを免除しておくこともできます。

ただし,兄弟姉妹(及びその子孫)以外の相続人には最低限の相続分として「遺留分」が定められており,これを害するような指定には,相続人間で精算を請求される可能性があります。また,後述する遺言執行者がいない場合には,相続人全員の合意で遺言内容を無視して遺産分割することも可能です。

 

⑷ 遺贈(民法964条),遺留分負担順序の指定(同1047条1項2号)

上記⑶は相続人の間での配分ですが,相続によらずに遺言で財産を譲り渡すことも可能です。これが「遺贈」です。

遺贈は一方的に相手に財産を譲り渡すもので,相手との間での約束である「贈与」とは異なります。また,相手が相続人であっても相続人でなくても可能な点で,「相続」とは違う性質を持ちます。

もっとも,遺贈にも,遺留分に従った精算の負担は及びます。これに対し,同時に遺贈を受けた者の中で誰が負担するかを遺言で指定することができます。

 

⑸ 推定相続人の廃除(民法893条)

上述の遺留分を有する者が遺言者に虐待をしたり,これに重大な侮辱を加えたり,著しい非行があったりする場合には,その相続人を自分の相続から外すように裁判所に判断を求める「廃除」の手続が取れます(民法892条)。これを遺言で行うことも可能です。ただし,遺言での廃除は,後述する遺言執行者に執行してもらう必要があります。

なお,遺留分のない相続人に対しては,廃除の手続は取れません。その者の相続分をゼロと指定すれば済むからです。

 

⑹ 遺言執行者の指定(民法1006条)

「遺言執行者」すなわち遺言の内容を実現するために必要な手続をする人を,遺言の中で決めておくことができます(遺言で決めていない場合でも,利害関係がある人は必要に応じて裁判所に決めてもらうように求めることが可能です)。ただ,知らずにいきなり選ばれると指名された相手が困ってしまうので,事前に根回しはあったほうがよいでしょう。

 

⑺ 遺言信託(信託法3条)

信託すなわち自分の財産を信頼できる人に託して管理または処分などを行ってもらうことを,遺言で開始することができます。これが遺言信託です。

近頃,信託銀行が上述の遺言執行を引き受けるとともに遺言書の作成管理をサポートするサービスが「遺言信託」として売り出されていますが,呼び方が重なっているだけの別物です。

 

⑻ 先行する遺言の撤回(民法1023条)

新しい遺言が古い遺言と抵触する場合,新しい遺言で古い遺言を撤回したものとみなされます。つまり,遺言によって,先行する遺言の効力を失わせることができます。

 

公序良俗違反

民法90条は,「公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は,無効とする。」と定めています。そのため,上述した法定遺言事項に当てはまるものであっても,内容次第では無効にされてしまう可能性があります。

例えば,長年連れ添ってきた配偶者を無視して不倫相手に全財産を遺贈するような内容は,無効となる可能性が高いでしょう。もっとも,不倫相手への遺贈を諸事情を踏まえて有効とした判例もあるため,画一的な判断はしづらいところです。

 

まとめ

以上のように,法定事項にあてはまらないと法的な拘束力は持ちませんし,あてはまっていても内容次第で効力が否定されることもあり得ます。

せっかく作る遺言が無効なものとならないように,弁護士に相談して内容を事前に確認してもらうことをお勧めします。

以上

監修者情報
弁護士風見 美瑠

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