弁護士法人萩原総合法律事務所(茨城県筑西市・常総市・ひたちなか市) | 弁護士コラム:SNSのやりとりとハラスメント
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弁護士コラム

SNSのやりとりとハラスメント

SNSのやりとりとハラスメント

恋愛感情とハラスメントの続きです。

登場人物:正社員A(男性)、先輩パート職員B(女性)、正社員C(男性)

事例2

今回は、Bからの穏便に処理して欲しいとの要望もあったので、Aには厳重注意し反省文を提出してもらった上、シフトでAとBの勤務時間をずらす等の対応としました。就業規則に定められた懲戒処分は行いませんでした。

しかし、男性が少ない職場なので、シフトで工夫しても、正社員で男性のAと、パート職員のBとでは、どうしても勤務がかぶってしまいます。

私は極力事業所に出て、他の職員にも協力を仰ぎ、AがBに関して不適切なことを言い始めたら「違うよ、A君。」「A君の勘違いだよ。」等皆で注意するよう対応を取りました。そうすると、私や別の職員がいる職場内での発言は減っていきましたが、AがBと二人きりの時に性的発言や嫌がらせが続いているとBから訴えがありました。

BがAを避けるようになると、Aは「Bは更年期でイライラしているから、仕事を回さない方が良い。」「Bは子どもを産んでないから、後輩を育てるのが下手。新人教育から外すべき。」等、正社員でAの同期で作るLINEグループで、Bの悪口を発信し始めたそうです。

C(男性)がAの発信を見かねて、「女にフラれてグチグチ言うのは男らしくない。」「仕事に恋愛感情持ち込むな。みんな迷惑している。」「そんなんだからいつまでも童貞なんだよ。」等、勤務時間中に、1対1の状況になった際、口頭でAを諫めたそうです。

職場の空気は悪くなり、Aへの処分を考えているうちに、Bは精神的苦痛を訴えて休んでしまいました。うつの診断書も出ています。Aから事情を聞こうとしたところ、逆にAからはCにセクハラを受けたとか、私が職場にきてAの言動を注意していたこと等が「人間関係切り離しのパワハラだ」と言われ、適応障害の診断書も提出してきました。

Q4  C(男性)のA(男性)への言動はセクハラに該当しますか。

A4 まず、同性間での性的言動についてもセクハラになり得るのは当然で、判例上も同性間の性的言動(加害者はからかいのつもりであった。)についても、セクハラと認定したものがあります(平成28年11月29日千葉地裁松戸支部判決)。

また、言動のセクハラ該当性については、当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されるものと言えるのであれば、環境型のセクシャルハラスメントが成立します。

この点、CのAへの発言を見ると、「男らしく」や「童貞なんだよ」と言った言葉は、就労に関係のない性的言動と言えますし、そのような発言が職場で繰り返されれば、対象となる人物の就業環境が害される可能性はある発言と言えるでしょう。

そのため、一切のおとがめなしとしてしまうと、「先例」となり、後日類似の発言が別の機会に行われた際に、会社として処分し辛い状況にもなりえます。

とはいえ、今回の事案はAのBへの発言をきっかけとしていること、Cは諫めるために多少行き過ぎた発言をしてしまったとも見られることから、これらの経緯も処分の判断に含めて検討すべき事案です。

前述したように、加害者の意図を汲んで、処分の程度を弱めた判例もありますので、Cの発言の経緯を汲んだ処分を行うことも、不当な判断とはなりません。

従って、Cの発言は1回のものであり、繰り返し行われたものではないこと、発言の意図もAのBへの悪口を諫めようとしたものであること、発言の態様も、1対1で、他の職員には聞かれていない場所であり、形に残りにくい口頭であったこと等、悪質性が高いとは言えない事情を多数見つけられるので、それらの事情をもとに、処分の程度を緩めることが可能と言えます。

なお、AのBに対する性的言動への対応を「厳重注意と反省文提出」としたことに照らすと、Bの処分をAと同等かそれ以上のものにすることは、比例原則・平等原則に違反するでしょうから、その点でもCへの処分を緩めることは妥当と言えます。

会社としては、Cの発言が、職場環境を害し得る性的言動であることは認定しつつ、Aへの処分と比較して軽い処分をとっていくことが妥当ではないでしょうか。

 

Q5  セクハラへの対処として、シフトの調整をしたり、勤務中にAの発言をみんなで咎めたりしたことが、パワハラになったりしますか。

A5 パワーハラスメントは、①職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就労環境が阻害される場合に成立します。

今回は、②業務に関係しない性的言動に関して、諫めることは安全配慮義務として必要かつ相当なものですし、それを周囲の職員に行ってもらうことも、相当な範囲を超えたとは言えません。例えば、Aの一切の発言を禁止する、B以外の女性従業員との会話・接触も禁止するなどの極端な対策をとれば、「相当な範囲」を超え、パワーハラスメント等に該当する恐れも出てきますが、今回のような対策で、パワーハラスメントに該当するものではありません。

 

Q6 Aの今回の発言は、会社の同期達でやっているSNS上でのやりとりがメインでした。SNSのやり取りについて、懲戒処分できるのでしょうか。私的なやり取りなので、無理でしょうか。

A6 原則として、職場外での行為については、懲戒処分の対象にはなりません。懲戒処分は企業秩序の維持のために認められた権限であるためです。

ただし、企業の社会的評価が相当程度毀損された場合、あるいは事業活動に相当程度支障をきたした場合に例外的に懲戒処分が認められます。

今回の事例では、SNSは確かに同期のみで行われた私的なものであり、SNS上のやりとりは「職場外」と言えます。しかし、AはBに「仕事を回さない方が良い」「新人教育から外すべき」等業務に関して、影響を与える発言を繰り返しているため、「事業活動に相当程度支障をきたす」場合として、懲戒処分の対象となり得ます。

なお、今回のSNSは同期のみでおこなわれており、対外的に情報が出てはいませんでしたが、第三者でも閲覧可能なSNS上にAがBへの発言を繰り返していた場合、それによって会社の社会的評価が相当程度毀損されたといえれば、そういった面でも懲戒の対象となります。

また、仮に業務に関して触れられず、単にBの悪口を言っていただけだとしても、SNSに登録していた同期の人数や、普段のSNSの使用方法が業務の遂行と密接していた場合等は、AのSNS上での発言により、間接的に職場内の活動に相当程度の支障が生じる場合があり得ます。職場環境が害されていたことの一つの証拠となりますし、AとBが二人きりの時に行われたAの性的言動の裏付け資料にもなり得ます。

 

Q7 今後は職員間での個人的なSNSを禁止して、職員間での連絡手段を職員全員がみることのできるチャットワークに限定させようと思います。そのような措置はできますか?

A7 確かに、個人情報の漏えいを防ぐ等の理由を付けて、SNSの利用を禁止している会社も見受けられます。また、社員同士で外食をする場合、上司の同席が必要等とする会社等もあります。

しかし、会社経営者が管理し指揮命令を行えるのは、あくまでも勤務時間の範囲であり、プライベートの時間に職員個人間がSNSを行うことを禁止する権限はありません。

そのため、チャットワークを会社で作り、そこで業務上のやり取りを行うよう指示することはできますが、それ以外のSNSで職員同士が私的に連絡をとることを会社が禁止することはできません。

 

今回の事例では、最初のAへの処分は懲戒処分に至らない厳重注意でしたが、仮に事例1の段階で戒告等の懲戒処分をしていたとしても、相当性を超える処分とはならないと考えます。

ハラスメントは、被害者の労働力を著しく減退させるだけでなく、職場の雰囲気等を悪くし、適切な対応がとられない場合は離職者を増やす結果となりかねない等、会社経営に大きな影響を与えます。

今回取り上げたハラスメントの他、マタニティハラスメント、カスタマーハラスメント等ハラスメント問題は多様となっており、全ての職場でいつ具体化してもおかしくない問題です。

本来の事業に関係ないところで、経営者の皆様の労力を奪われないよう、防止のための社内研修や就業規則の改定等、平時での対策が重要になってきます。

当事務所では、ハラスメントに関する研修(経営者向け、社員向け)や、就業規則の見直し等も対応しております。

また、有事の際の対応についても、調査方法や処分をどうするか等は非常に悩ましい問題と思います。お気軽に当事務所までご相談ください。

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